東京都が48,000人の保育士を対象に、保育現場の実態を調査するアンケートを実施しました。アンケートでは保育士が関わる悩みが浮き彫りに。
保育士が負担に感じていることや、今の職場にどんな点を改善して欲しいと思っているのでしょうか。調査結果を独自の視点で探ってみたいと思います。
参考:東京都保育士実態調査
保育士の仕事の中で負担に感じていることは?
保育士の仕事は華やかに見えて、事務作業や環境整備など多岐に渡ります。そんな保育士の仕事の中で、どんな点に負担を感じているのでしょうか。
アンケートによると下記のような結果になりました。
- 行事(準備含む):62.8%
- 保育計画書の作成:55.9%
- 保護者対応:49.6%
- 職員間の情報共有・打合せ:40.8%
- 保育教材の準備:38.1%
- 保育日誌の記入:36.5%
- 監査等への対応:33.9%
- 掲示物の作成:32.3%
- 連絡帳の記入:30.4%
- 職員の育成:26.5%
- 児童の安全に関するチェック表の記入:25.1%
- 食育計画書の作成:16.4%
- 地域への対応:15.4%
- その他:11.1%
- 特にない:7.1%
保育士が一番負担に感じていることのワースト1位は、夏祭りや運動会、クリスマス会や発表会など、行事に負担を感じている人が多いという結果になりました。
行事は子ども達が成長する大事な機会ですし、保護者にも様子を伝えられるチャンスです。
しかし、内容を充実させるとその分準備も必要になり、保育士同士の人間関係に問題がある保育園では、行事の準備に負担を感じている保育士も多いのではないでしょうか。
保育園では入退室の管理や、保育計画を電子化するICT化が進み、手書きでの作成からパソコンへと移行しています。
しかし、どの保育園でも導入しているかというと、そうではありません。 操作方法を覚えなくてはいけませんし、パソコンやインターネットに抵抗がある保育士も少なくありません。
誰が対応することになっても、簡単で分かりやすいシステムの開発や導入が進めば、保育士の事務作業の負担も軽減できるのではないでしょうか。
今の職場で改善して欲しいことは?
保育士が負担に思っていることが明らかになったところで、どのような点を改善して欲しいと思っているのでしょうか。 保育士が改善を求めているのは、もっと現実的なものであることが分かりました。 その結果がこちら。
- 給与・賞与等の改善:65.7%
- 職員数の増員:50.1%
- 事務・雑務の軽減:49.0%
- 未消化(有給等)休暇の改善:36.5%
- 勤務シフトの改善:32.0%
- 職員間のコミュニケーション:27.7%
- 責任範囲の縮小:18.6%
- 相談体制の充実:18.2%
- 研修機会の充実:14.1%
- 園(など)の理念や運営方針:12.6%
- 雇用の安定化(正社員登用):12.3%
- 評価制度の見直し:11.7%
- その他:11.2%
- 特にない:6.2%
- 権限範囲の拡大:5.4%
65%と高い数字になったのが、給与や賞与の改善です。 保育士の給与は他業種と比べて低い傾向にあり、切実な思いが伝わってきます。
さらに職員が足りず、有給も取れない、取りづらいということも、この結果から読み解くことができます。
子どもたちの命を守る仕事なのに、責任が重く、業務と対価が見合っていない状況というのも切実な問題です。
これらの負担が軽減されないことや、改善して欲しいことがいつになっても変わらないということから、退職の道を選ぶ保育士も少なくありません。
改善が見られず退職、気になる退職理由は?
子どもたちはかわいいけれど、我慢の限界に達し退職を決断するその理由とはどのようなものなのでしょうか。 アンケートでは具体的な内容が明らかになりました。 気になる退職理由の集計はこちら。
- 職場の人間関係:38.0%
- 仕事量が多い:27.7%
- 給料が安い:27.4%
- 労働時間が長い:25.3%
- その他:21.2%
- 結婚:18.1%
- 妊娠・出産:11.8%
- 健康上の理由(体力含む):10.7%
- 雇用期間満了:10.5%
- 転居:10.1%
- 他業種への興味:7.9%
- 職業適性に対する不安:6.0%
- 子育て・家事:5.8%
- 保護者対応の大変さ:5.0%
- 家族の事情(介護等):4.5%
- 配偶者の意向:2.0%
保育士は女性が多い職場なので、女性特有の人間関係に悩み、退職を決意する人が多いようです。
さらに、事務などの仕事量が多く給与が安い、そして労働時間が長いなど、多くの問題点が浮き彫りになりました。
結婚や出産、転居など家庭の事情によるものもある中で、保育士の適正に対する不安や、保護者対応の大変さなど、保育士という職業イメージとのギャップに悩んでいることも伺えます。
我慢して続けても、体調に支障をきたしてしまうので、心機一転、転職して違った環境で保育士としてリスタートするという選択をする保育士も増えています。
変わらないなら、自分が他の保育園で働くという、環境を変えるという点では最善の方法なのかもしれません。
職場を選ぶ時重視しているポイントとは?
日々の業務の中で不満が募り、退職の道を選ぶ保育士が多いという問題点がありますが、決断したからには、次の職場では同じ思いはしたくないと思うものです。
では、どんな点を重視して次の職場を選んでいるのでしょうか。 今、まさに同じような状況で悩んでいる人もいるかもしれません。 気になる結果を見ていきましょう。
- 勤務地(自宅から近い等):72.5%
- 職場の人間関係:60.3%
- やりがい:46.4%
- 給与が高いこと:46.4%
- 勤務時間・交代制の融通がきく:44.7%
- 休暇が多い・とりやすい:43.5%
- 保育理念への共感:38.7%
- 福利厚生の充実度:36.6%
- 昇給制度(キャリアアップ):20.7%
- 園(など)の施設や設備充実度(新しさ等):20.0%
- 法人や園(など)の評判:17.1%
- 職員の数:13.5%
- 研修制度の充実度:11.4%
- 寮や家賃補助制度の有無:9.9%
どれも気になるものばかりです。特に興味深いのは、職場の人間関係や給与などですが、妥協せず保育士としての仕事を全うしたいと考える人が多いようです。
自宅からの距離や、待遇面などもしっかり見ながら、法人や園の評判をチェックするなど、転職に対する妥協を許さない姿勢は、今悩んでいる人には刺激になるのではないでしょうか。
我慢して続けるのではなく、譲れないものを明確にして、保育士の仕事を全うする。 退職するかどうか迷っているなら、一度きりの人生なので、あなたが輝いて働ける場所を見つけてみませんか。
でも、転職はハードルが高いですし、一歩踏み出せない人も多いのではないでしょうか。 最後は、転職活動をする時に、どんな場所から情報を得ているのか、転職活動事情についての調査結果を見ていきましょう。
転職活動をする時、どこから情報を得ていますか?
転職活動をする保育士は、就職活動とどう違うのでしょうか、どのような方法で情報を集めているのか気になるものですよね。
アンケート結果によると、保育士の転職活動も少しずつ変わってきていることが分かります。 それは、探す場所がハローワークと同じくらい、民間の職業紹介を利用しているという点です。
求人情報誌の募集広告を見る他、求人サイトをチェックする人や、転職支援サービスを利用して求人を紹介してもらう人も増えているのです。
- 民間職業紹介(求人情報誌・求人サイト等):39.2%
- ハローワーク:33.9%
- 先輩や友人からの紹介:21.3%
- 就労を希望する保育所等の所在する区市町村:14%
- 保育士仲間:11.9%
- 保育人材・保育所支援センター:10.2%
- 以前の勤め先(保育所等)や同僚からの紹介:9.5%
- その他:9.2%
- 民間職業紹介(相談窓口):4.9%
- 卒業した学校(指定保育士養成施設):4.7%
保育士の求人倍率は年々増加傾向にあり、求人が多すぎるため、選ぶのが難しいというデメリットも生じてきています。
ハローワークと同じように無料で利用できるなら、プロの力を借りて、希望する条件に近い保育園を複数紹介してもらい、面接のアドバイスを受けながら確実に転職先を見つけたいという人が増えてきています。
個人情報を適切に管理する「プライバシーマーク」を取得し、保育士の個人情報の徹底管理を特徴としてアピールする会社も増えています。
さらに、保育園ならではの、人間関係が良い保育園だけを紹介する転職支援サービスや、仕事とプライベートを両立できる残業少な目の保育園を紹介する会社など、特色はさまざまです。
求人が多いからこそ、プロの力を借りる時代です。 今すぐ転職したいという人や、3か月位じっくり時間をかけて探したいという人もいますし、 年末で辞めて新年は新しい職場でスタートしたという人にも対応してくれるのです。
利用している人と、利用していない人とでは、保育士の求人の見つけ方も大きく変わってくるので、損をしないためにも無料会員登録をして、アドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
まとめ
保育士が負担に感じていることや、改善して欲しいことは、すぐに変えることはできません。それを踏まえて、退職という道を選び、新しい一歩を踏み出している保育士が多いことが分かります。少しでも現状に不満を感じているなら、転職のプロに相談して新しい一歩を踏み出してみましょう。