子どもたちの笑い声があふれる保育園ですが、裏では陰湿ないじめに悩んでいる人も少なくありません。
「これくらいなら我慢すれば大丈夫」「いじめを受けていても子どもたちはかわいい」と思って辛い状況を続けていませんか。保育士のいじめは決して他人事ではないのです。
もし、園長や先輩保育士からいじめやパワハラを受けているのなら、そうなる前の備えと対処法について考えてみませんか。あなたが少しでも楽になれるよう考えていきましょう。
パワハラとは
企業や政治家、そしてスポーツ選手に対してパワハラ行為があったことが取り上げられ、以前よりも身近な問題になってきました。
過去には当たり前だった上下関係の中にもさまざまなハラスメントが存在しています。このハラスメントという言葉は、東京都内にあるコンサルティング会社の社員が作った和製英語がはじまりとされています。
ハラスメントには深刻な問題が山積みで、厚生労働省は、このような社会背景を踏まえて、職場のいじめに対する会議を発足させました。また、地方自治体もパワハラの定義や指針を策定するなど、本格的に職場におけるいじめの改善に向けて取り組みが行われているのです。
パワーハラスメントの意味としては、以下のように定義されています。
職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義をしました。
この定義においては、
- 上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当すること
- 業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当することを明確にしています。
引用:厚生労働省「職場のパワーハラスメントについて」
6つのパワハラの種類
パワハラと一言にいっても、さまざまな場面と行為が想定されますが、厚生労働省はパワハラの典型的な例を6つの種類に分けて注意啓発を行っています。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
引用:厚生労働省「職場のパワーハラスメントについて」
そのそれぞれを保育園に当てはめて考えてみましょう。
- 1身体的な攻撃突き飛ばしやビンタなど、直接身体に触れて攻撃するケースです。保育中には子どもたちがいるので、直接攻撃される事はないと思いますが、子どもが帰った後やロッカーなどの密室で起こりうることもあるかもしれません。
- 2精神的な攻撃子どもや保育士がいる前で、名誉を傷つけられる暴言を受ける事などが該当します。
- 3人間関係からの切り離しこの人間関係の切り離しは保育士の人間関係で1番受けやすいパワハラかもしれません。仲間はずれをする他、あいさつをしても無視するなどの行為が当てはまります。
- 4過大な要求書類の提出に余裕があるのにも関わらず、事務作業を促す他。事務を優先させ保育に入ることを妨害する行為など。
- 5過小な要求子どもがいて保育が必要な状況にも関わらず、掃除や環境整備を指示するなど。
- 6個の侵害プライベートな情報を聞き出す事や聞き出した情報を他の保育士に言いふらす行為など。
これらはほんの一部で、シチュエーションによっても解釈が変わってきますが、保育現場に置き換えてみると、身近なものであることが分かります。
身近なパワハラの現状
仕事を通して受けるパワハラとは、具体的にどんなものがあるのでしょうか。同じく厚生労働省が調査した資料の中から身近な事例について見ていきたいと思います。
- 身体的な攻撃
痛いと言ったところを冗談ぽくわざとたたく(女性、40 歳代)- 精神的な攻撃
全員が観覧するノートに何度も個人名を出され、能力が低いと罵られた(男性、20 歳代)- 過大な要求
明らかに管理者の業務であるにもかかわらず、業務命令で仕事を振ってくる(女性、40 歳代)- 人間関係からの切り離し
今まで参加していた会議から外された(女性、50 歳以上)- 個の侵害
引越したことを皆の前で言われ、おおまかな住所まで言われた(女性、20 歳代)- 過小な要求
故意に簡単な仕事をずっとするように言われた(男性、30 歳代)引用:厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査について」
平成28年度報告書
これらの事例は身近であり、保育士同士の信頼関係がなければ、嫌だと受け取れてしまうものばかり。しかし、神経質になり過ぎると全てがパワハラに思えてしまうこともあるため、考え過ぎは禁物です。
パワハラが発生した職場に当てはまる特徴
厚生労働省が調査した資料によると、相談事例を介して職場環境の分析をした所、パワハラが発生する職場に当てはまる特徴があることも分かりました。
そのトップ5は以下の通りです。
- 上司と部下のコミュニケーションが少ない職場:45.8
- 失敗が許されない・失敗への許容度が低い職場:22
- 残業が多い・休みが取り難い職場:21
- 正社員や正社員以外(パート、派遣社員など)さまざまな立場の従業員が一緒に働いている職場:19.5
- 従業員数が少ない職場:13.1
日中は保育に入るため、どうしても園長や主任、そして他のクラスの保育士とはコミュニケーションが取りづらいものです。日々のコミュニケーションの薄さがお互いの理解に比例しているのかもしれません。
また、命を預かる仕事ということから、緊張感を持って接しているため、事故やケガには敏感という傾向もあります。
このような結果を見ると、保育園では保育士同士の人間関係がいじめやパワハラとして発生する要因がたくさん含まれている事が分かるのではないでしょうか。
心に負担がかかることを意識しよう
保育士は一人ではできない仕事ですし、チームワークが求められます。しかし、いじめやパワハラを受けたらどのような影響があるのでしょうか。
同じく厚生労働省の調査では、「パワーハラスメントを受けたと感じた場合の心身への影響」(複数回答)についても公表しています。
仕事に対する意欲が減り、不安や怒りを覚え眠れなくなる。
そして徐々に休むことが増えるといった負のサイクルに陥ってしまうのです。
最近眠れなくなった、食欲がない、体重が減った(増えた)イライラするということはありませんか?もしかしたら心や体の不調が出ているサインかもしれません。
加害者にもなりうる可能性
パワハラは園長や主任とった上司だけとは限りません。
保育園では常勤や非常勤、そして経験年数の違う保育士が多数働いているので、被害者にもなり、加害者にもなる可能性もあるのです。
ここで改めてどのような関係でパワハラが起こるのか関係性についても見ていきましょう。
加害者と被害者の関係、保育園内で考えられる構図
- 上司から部下へ:園長や主任から一般保育士
- 先輩から後輩へ:先輩保育士から後輩保育士
- 正社員から正社員以外へ:正社員保育士からパート保育士
- 正社員の同僚同士:正社員保育士同士
- 部下から上司へ:一般保育士から園長や主任に対して
- 後輩から先輩へ:後輩保育士から先輩保育士に対して
- 正社員以外から正社員へ:パート保育士から正社員保育士に対して
- 正社員以外の同僚同士:パート保育士同士
- その他


どの立場であっても、誰もが加害者になる可能性があります。大事なのは働く保育士の個性を理解し、受け止め、子どもたちのために協力していくということ。
この気持が少しでもブレてしまうと、あなたも保育士を傷つける一人になってしまうかもしれません。
パワハラを受けた時の対応策
パワハラについてさまざまな角度から見てきましたが、実際にあなたがパワハラを受けてしまった場合はどのように対処したらいいのでしょうか。
パワハラを受けたと感じたその後の行動について、会社に相談する他、外部の相談窓口を利用する人がいる一方で、休んだり退職の道を選んだ人が7%、そして、何もしなかったとする人が41%もいることが分かりました。
- 何をしても解決にならないと思ったから
- 職務上不利益が生じると思ったから
- 職場内で公になることが懸念されたから
- ハラスメント行為が更にエスカレートすると思ったから
言っても何も変わらない、むしろ悪化するのではという切実な気持ちが伝わってきます。
- 口頭指導
- 配置転換
- 書面による指導
- 減給など解雇以外の懲戒処分
- 被害者への謝罪
- 役職解任
という対応を行っている事も分かりました。しかし、被害者側からすると、口頭で指導した所で改善は見込めず、加害者となる保育士を別の保育園に異動させた所で、心に受けた傷は消えません。
立ち向かったとすれば、状況は悪化しますし、報復行為があるかもしれません。
嫌がらせ行為を受けている可能性がある場合には、早急に相談して我慢しないことです。そして、働く環境は心身に大きな影響を与えるので、早めに職場を変えるという選択肢も考えましょう。
保育士同士の人間関係の悪化がハラスメントにつながるかは紙一重です。今の職場がハラスメントの温床になっているのなら、早めに環境を変えて保育に専念できる職場を見つけることが懸命です。
まとめ
職場におけるパワハラは、身近な問題として一人ひとりが意識しなければいけません。子どもたちにいじめはいけないと教える保育士も、その被害に合っているなら早めにその環境に見切りをつけることが重要です。いじめやパワハラがない職場は必ずあります。でも求人票で探すのは至難の業。人間関係が良い保育園に特化した転職支援サービスを利用して、長く働ける職場を見つけるお手伝いをしてもらいましょう。